八日目の蝉

八日目の蝉。このタイトルは、劇中で産まれなかった子供と薫との対比かと思って読んでいたのですが、この小説の着想点である実際の事件に巻き込まれてしまったお子さんたちと薫との対比でもあるのかもしれません。瀬戸内海の暮らしの描写は穏やかで、根こそぎ未来が奪われてしまった子供達のことを考えないわけにはいかなかったです。部外者がご冥福を祈るのはあまりも軽々しいことですが、やはり祈らずにはいられないです。当事者性の記述については、興味深かったです。難しくてまだ答えが出ないですが。全体通して男性社会への批判も込められた小説だと思うのでこの社会のつくりへの疑問がある人にはぜひ読んでほしいと思いました。一点気になったのが、無責任な母性礼賛がちょくちょく顔を出すところですかね。あえてやってるならいいですが、個人的にはお腹いっぱいです。というわけで、★は４つにしておきます。