「生命の起原」とロシア・ソ連―ヴォルガ川・モスクワ川・オカ川の風景

基本的に失格である。日本語が拙い。ロシア史の知識がない。教養の底が浅い。何とでも言う。言える。口絵カラー写真の著者を見て、目を覆いたくなった。こいつには無理だよ、と。江上不二夫の娘というのが、裏目にでている。でも、これしかないから、読む。読む価値はある。とてもある。養子とのインタビュー（P.70）、オパーリンの自伝（P.152）、オパーリンの訪日記録（P.214）など、未公開資料の価値は高い。とても高い。外国人の立ち入りが禁じられている故郷ウグリチの、朽ち果てた生家の写真など、本当に人が住んでいるのだろうか（P.37）。養子とのインタビューは、確かに「まったく、学問的な意味のない」内容であるが（P.58）、それでも、地の文に混ぜることなく、そのまま掲載して欲しかった。また、筆者はオパーリンとは複数回会っているらしいが（P.226）、その割にはオパーリンの肉声や質感は伝わらない。しかしそれにしても訳が拙い。オパーリンこそいい迷惑である。